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□それだけ
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早いもので、わたしが大学生になってからもう二年が経ちます。
先輩と出会ってから、二年です。
わたしより二つ年上の先輩は理系で工学部だから、もし同じサークルに所属していなかったら絶対に出会うことはありませんでしたね。
初めて出会ったあの日から、わたしは恋をしました。
あなたに。
誰にでも優しくて、打ち上げや集会をする時はお酒を我慢して車を運転してくれて、人を笑わせるのが上手な先輩。
知れば知る程好きになりました。
でも、ずっと先輩だけを見ていたから、すぐにわかりました。
先輩に好きな人がいること。
名前も知らないその人はとても綺麗で、わたしなんかとは比べものにならないくらい綺麗で。
その人を見る先輩の目は、とてもとても優しくて。
報われない恋なんだってことも知りました。
いつだったか、その人が男の人と手を取り合って二人で幸せそうに歩いているのを見たことがあります。
それでも先輩がその人を見る瞳は優しいままで。
苦しくなりました。
先輩はその人が好きだけど伝えることはしないんですね。
それはきっと、伝えればその人を困らせてしまうからですよね。
好きな人が困るのは、嫌だから。
先輩は、ただその人が好きなだけ。
報われたいとか幸せになりたいとか、そういうのは無いみたいで、ただ純粋に。
ただ、好きなだけ。
それだけ。
先輩がその人を好きでいるように、わたしも先輩のことを好きでいたいと思います。
あの人のことを想う先輩が好きです。
誰かのことを純粋に好きでいる先輩が、とても。
報われることはないけれど、それでも。
ずっとずっと思い続けたいです。
好きでいたい。
わたしも気持ちを伝えたいとか、先輩の恋が実ってほしいとか、先輩に他に好きな人ができてほしいとか、そういう思いは無いです。
ただ、好きなだけ。
それだけです。
好き。
ただそれだけ。
痛みも苦しみも悲しさも切なさも全部含めて、好き。
ただ、それだけ。