mini

□no music,no life.
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嬉しいことがあった日も、嫌なことがあった日も、わたしは音楽を聴く。
お気に入りの真っ白いヘッドフォンを付けて、大好きな音楽を聴く。

ヘッドフォンさえ付けてしまえば、もうこっちのモノ。
周りの音なんて届かない、そこはわたしだけの世界。



──もう、無理みたいだ。

目を閉じれば甦るあなたの苦しそうな顔。
その顔は、罪の意識で歪んでいる。

違う、違うの。
あなたは悪くない。
そんな顔しないで。



目を開けて、軽く頭を振って追い出す。
ボリュームを少し上げて、もっと沈もうと耳を澄ます。



──約束、守れなくてごめん。

やめて、もう何も言わないで。
約束なんてもういいの。
あなたを繋ぎ止めるだけの口実なんだから。
忘れて、お願いだから。



耳に響くのは、あなたが好きだと笑った曲。
少しでも近付きたくて、わたしも好きだと嘘をついた。

本当は嫌いよ、こんな悲しい曲。
流れてくるのは切ない歌詞ばかり、なのにメロディーは明るくアップテンポで、余計苦しくなるもの。



──いつだって、君を想っているよ。

どうしてそんなに優しくするの。
わたしには、あなたに優しくすることも、あなたを冷たく突き放すことも出来ないのに。

あなたを苦しめているのは、わたしなのに。



リピートボタンを押して、もう一度耳を澄ます。
あなたの好きだと笑ったこの曲。



わたしと、同じ。
あなたは好きだと笑ったけれど、その言葉が本当だったかどうかなんて、わからない。

いつも笑って好きだと言ってくれたけど、わたしはそれに答える言葉を知らなかった。

馬鹿なわたし。



目を閉じて、耳を澄まして、あなたを思いながらリズムにのる。

せめて、この曲を好きだと笑ったあの笑顔だけは、本心からであってほしい。
わたしを好きだと言ったあの言葉も、苦しそうな顔も、全て嘘でいいから。

どうか、この曲だけは。



──幸せになって。

最後まで言えなかった言葉。
このメロディーにのせて、どうかあなたへ。



「愛していたわ」




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