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□生か死か
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──さぁ、ゲームをしよう。
薬のせいでぼんやりした頭。
だれ?だれ?
焦点の合わない目を凝らして、目の前に立つ男を見る。
「ゲーム?」
小さくつぶやく。
男が笑う気配がした。
──そう、楽しいゲームだ。
直接頭に響くような男の声。
そういえば頭が痛い。
割れるようにガンガンする。
──君が勝てばその酷い頭痛から解放される。
「本当に?」
また、笑う気配。
薬と頭痛のせいであまり脳味噌が働かない。
早く解放されたい。
──君が勝てば。
男の声。
私は問い掛けた。
何をすれば良いの?
立っていることも辛くなった私。
床に座り込んだ。
散らばる注射器とアンプル。
いつもはこのぐらい平気なのに、今日は量を間違ったのか。
──簡単さ。この銃でお互い打ち合いをする。弾は一発しか入ってない。
何の意味があって?
死ぬの?
──考えてごらん。生きることは難しく、苦痛に満ちている。が、死ぬことは簡単、永遠の安楽が待っている。
優しく諭すような口調。
それは詭弁だ。
男の靴をぼんやり見ながら思う。
──君は、痛みと苦しみに満ち満ちた生を選ぶのか?
わからない。
あたまがいたい。
──死ぬことは終わりじゃない。全ての苦痛から解放されるだけさ。
なんて甘美な響き。
けれどそれはフェアじゃない。
今の私には何かを狙うなんて不可能。
──大丈夫、君が永遠の安楽を望むなら。
男に促されて銃を握った。
冷たい感触、黒い。
重たい。
男に向けられない。
座ったまま銃口を床に向けた。
──ほら、早くしないと、もっと酷くなる。
男の声に応えるように、頭はだんだんと痛みをました。
考えられなくなる。
ゆっくりと、両手で支えた銃を男に向ける。
嘲笑っている、嘲笑っている。
わたしを。
そのまま引き金をひく。
かちり、軽い。
──ああ、弾は出なかったね。じゃあ次は私の番。
手から銃を奪われる。
目の前には黒い穴。
わたしの心臓をねらっている。
その向こう、顔のない男が嘲笑っている。
かちり、軽い音。
一瞬の静寂、それから目の前が暗くなった。
私の負け?
見えない視界の向こうで、顔のない男が嘲笑っている。
──君の勝ちだ。全ての苦痛から解放されるよ。
あア、
なる ど
わタ
シ
かッ
死ヌ?
痛くない。