1万hit企画SS

□彼体温。
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「先輩、風呂沸いたっすよ」
「あぁ、ありがとう」


洗い物を終え、エプロンで手を拭きながら振り返ってそう伝えると、先輩はそれまで腰かけていたソファーからのっそりと立ち上がった。

先輩がこうして家に帰って来たのは久々で。大学での研究がようやく一段落したんだ、そう言って傍目から見てもかなり疲れた顔をして先輩は家に帰って来た。

夕飯を食べて、あとは風呂に入って寝るだけ。
そのまま真っ直ぐ風呂場に行くのかと思いきや、こちらに近づいてくる。


「一緒に入ろう?」
「……は?」
「一緒に入ろうよ、海堂」
「なんでっすか、アンタ疲れてんだから一人で入ってゆっくりしろよ」


狭い風呂場に男2人が入ったら、もともと狭い風呂場がもっと狭くなる。
お湯だって零れて少なくなるし、何よりゆっくりできないだろう。
疲れてる時はじっくりお湯に浸かってぐっすり眠るのが一番だ。


「嫌」
「なんで」
「海堂と一緒に入りたいから」
「そんじゃゆっくりできないだろって」
「海堂と一緒に入った方が俺には癒しなの」


だから、ね、お願い。
そう甘えた声で言われると、つい首を縦に振ってしまう自分がいて。
その途端嬉しそうな顔を見せる先輩が目の前にいて。
それを見ると自分まで嬉しくなっていることに気付いて。

くすぐったくて仕方ない。
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