1万hit企画SS
□違和感の正体は、
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それは少しの違和感から。
「ん…、」
障子から陽の光が僅かに差し込まれ、朝の訪れを知らせる。
春先になってきたとはいえ、まだまだ朝は冷える。腕の中ですやすやと眠っている緋真の体温を感じ、白哉は穏やかな気持ちになる。
もう少しこの一時を味わっていたいが、職務がある。そういうわけにもいかない。
「緋真…」
申し訳程度に少し小さめの声で呼ぶも返事はない。
「緋真」
今度は先ほどよりも心持ち大きめな声で。
「う、ん…、…くやさま」
まだ眠たそうな眼を少し持ち上げ、何とか意識を覚醒させようとする。
舌足らずに呼ばれる己の名に僅かに胸が弾む様な気がして、自分らしくもないと白哉は心の中で笑う。
「起きたか、緋真」
「はい。おはようございます、白哉様」
ふわり、と。
微笑みながら挨拶をしてくる緋真はいつもと変わらず美しい。白哉はその笑顔を見ているだけで気持ちが落ち着くような気がした。
「おはよう、緋真」
だが、今日の緋真はいつもとどこか、僅かにだが、違うような気がして。
心の中に若干の蟠りを感じながら白哉は体を起こした。
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