作品庫
□あの花は
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昼下がり、閑かな光。
廃寺の隅の荒れた庭。
椿の樹が生い茂り、
とりどりの花を地面に散らす。
私にはその花が主無き寺に捧げられた散華に見えたが、寺に棲まう妖は、
「恋をしたから首が落ちた」
とくつくつ笑った。
その声の軽やかさ。古庫裡婆にしちゃ若すぎる。
姿を見せろとせがんだが、彼奴はふいと気配を消してそれっきり。
春の気紛れ、白昼夢。
ねぇ、君。
まだ其処に居るなら教えてくれよ。
あの花たちはまだ咲いているかい?
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