9周年記念小説

□ 目一杯、背伸び中

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日も沈み薄暗くなった夕暮れ時、夕食の買い物帰りに河原の側を通りかかると元気に遊ぶ子供達の姿に目がゆく。

その中には夢中になってサッカーボールを追いかける眼鏡の少年の姿・・・

ーガキ扱いするなって言われてもあの姿見たら誰だってガキ扱いしちゃうわよね・・・

半ば呆れながらも少年の楽しそうな表情を見て微笑む。

もうすぐ夕飯の時間だからと声を掛けようとするがそれよりも先に彼が私の姿に気付く。

「ー志保!!」
私を呼ぶ声に一緒に居た仲間達もこちらを向く。

「あっ志保お姉さんだー」
「買い物帰りですか?」
「今日の晩飯は何すんだ?うな重か?」

口々に私に声を掛ける。
私は優しく微笑み挨拶をする。

「江戸川君、さぁ帰りましょ」
「おおっじゃあな!」
そう言って自然に手を繋ぐ。

「コナン君と志保お姉さんって姉弟みたいで可愛いねVv」
無邪気な歩美ちゃんの発言に彼は叫ぶ。

「志保は俺の姉でなく恋人だ!!!」
ムキになって怒る彼に3人は冷やかすように笑う。

「コナン君たら、またそんな事言って〜〜」
「10も上ですよ?」
「コナンみたいなガキ、相手にされねーよ」
揃って否定され彼の機嫌は更に悪くなってふてぐされ顔・・・
クスッと笑う私にまた彼の怒りを誘う。

「志保!笑うなよ!俺は本気だぞ!」
「はいはい…じゃあね、みんな」

「バイバーイ〜」
「また明日、学校で」
「じゃあな〜」
元気よく手を振って別れの挨拶をする3人に軽く手を振って阿笠邸への道を2人並んで歩く。

「志保・・・」
グイッと私の手を引きしゃがませる・・・
ーチュッ・・と唇に小さなキスを落とされる。

「俺はまだまだガキだけど志保への気持ちは本気だからな・・・だから・・・」
ジッと私を見つめて真剣な瞳と声で私に言う。

「いつかお前に相応しい男に・・・とびっきり良い男になってみせるからな!だから待ってろよ?」
「ー楽しみにしてるわ・・小さな探偵さん・・・」
返事と供に彼の額に軽くキスを返す。


ー手を繋いでも姉と弟でなく、
誰もが羨む恋人同士に見られるように・・・

ー彼女を力一杯、抱きしめ、背伸びをしなくても彼女にキスが出来る…

そんな日を願う。

ーいや、いつか必ずそうしてみせる・・・
今は目一杯背伸び中…

ーEND−

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