T.the black and white dragon


□prolouge:─炎の記憶─
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 鼻の奥を突く血の生臭い匂いと、灰に思い切りむせた。
 今まで生きていた“人”が“モノ”」に成り果てて、血を流しながら無残に転がっている。自分の目の前で既に動かなくなってしまったのは母だった“モノ”だ。
「うぅ…うぁ…」
 何があったのかよく分からない。途中から頭が考えるのを止めてしまったから。
 でも、なんでだろう?涙が止まらない。乱暴に袖で拭うと嗚咽をこらえ、小さな少女は辺りを見回す。
 絶望そのもののような一面赤い景色に、更に鮮烈な赤い血が彩りを添えている。
 どうして……?
 何度も何度も繰り返す。
 この人たちには未来があったはず。なのに、時間は止まってしまった。わたしがいけないの…?
「そうよ。あなたが生まれて来なければ誰も死ななかった」
 赤の中に一点、暗い影が射す。
「あなたは私達…いえ、世界の脅威になる。本来はヒトに与えられざるべきその力」
 その影は黒紫を基調としたローブを纏った女の人だった。まるで炎のような真っ赤な髪が炎に煽られ、緩やかに靡く。
 少女にゆっくりと近付き、その手を前に向ける。
「恨むなら、自分自身を恨んでちょうだいね」

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