□魔法のような。
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アンタがこの学校の養護教諭になって、俺の日常が大きく変わった。



みんなはあいつを怖いと言ってるけど、俺はあいつを見た時…何かよく分からない感情が入ってきた。



そりゃ…少しは怖かったさ。

けど、あいつの微笑んでる顔や…あいつを見るとどうしてか胸が温かくなるんだ。






こんな気持ちになったのは本当に初めて。

この懐かしい気持ちはなんなんだろ…。





「先生ぇ、ベッド借りてもいい?」



今日もあいつのいる保健室に向かう。


いつも一緒にいるアシタバやシンヤや美作には黙って来た。


あいつ等がくると先生と二人きりになれなくなる。




まぁ、先生と二人きりになるために来たんだけど……先生いねぇ。


いつもはいるのに。



どこ行ったんだ?


「…まぁいいか」


俺はベッドで寝るのをやめてイスに座る。


ベッドで寝るのはここに来るためのただの口実だ。



あいつに会うための口実。




















「あれ?来てたんだね」



「先生!」


「そんなに大きな声を出さなくても聞こえてるよ」


先生は小さく笑って手に持っていたキレイな花の入った花瓶を、先生専用の教卓の上に置いた。



「先生、花好きなんだ」


「まぁね。
花はキレイだから」


「…キレイなものが好きなの?」


「どちらかと言えばそうだね。」


「ふーん」



しばらく沈黙が続く。


先生は俺の隣にあるイスに座った。




「で、どうしたの?
なにか用事があって来たんでしょ」



「あ〜、まぁ」


先生の質問に言葉がつまる。


先生に会いに来たなんて言えるわけない。


ただ話してるだけで俺は幸せなんだ。




「まぁ…ちょっとだけ、サボりにきた」


「授業には出ないとダメだよ」


「イヤだ、めんどくせぇ」


「…どうして行きたくないの?
もしかして、イジメられてる!?」


「ちげぇよ」

なに言ってんだ、こいつ。



「とにかくイジメられてなんかねぇから」


「…分かった。」



「え?」


「本当は生徒をサボらせちゃダメなんだけど、今日は特別にサボらせてあげる」



「い、いいのか?」

まさか…良いって言ってくれるなんて。


「だから、ベッドで寝てなよ。
バレたら僕、怒られちゃうからさ」



俺は先生にイスを立たされ背中を押されるようにベッドへ連れて行かれた。



俺はベッドに横になった。






ベッドの横で先生が微笑んでる。




その微笑みを見てると眠くないはずなのに徐々に眠気が襲ってきて、俺は瞼を閉じた。













end
 

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