倉庫 GC

□あなたが子供だった頃
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ぐぇっと蛙の鳴くような声をあげ、子供は背中から地面に落ちる。
そこでようやく、ローワンは立ち上がるという動作を思い出した。

「だ、大丈夫か!?」

立ち上がったその足で子供に駆け寄り、言語の違いも忘れて声をかける。

「怪我は?頭打ってないよな!?ああ、こんなに服汚して……」

抱え上げて体をぐるりと見回すが、服が芝まみれになった以外、特に傷もなさそうだ。
顔を見ても痛がっている様子はなく、不思議そうな表情でローワンを見上げている。
金の髪に紫の瞳。この国では目立ちそうな容姿をした男の子だ。

「元気なのも結構だが、木に登るのは危ないぞ。ちゃんと親御さんについててもらわないと」

通じているかもわからない英語で説教を始めると、少年は小首を傾げて木の上を指差した。

「上?」

指された先に目を遣ると、大人の背より高い位置に猫が一匹留まっているのが見えた。
登るだけ登って下りられなくなったのだろう。小さい体を更に小さく丸め、じっと地面を見詰めている。
どうやら少年はあの猫を助けようと奮闘していたらしい。

「随分と面倒なところに……」

ローワンの身長でも、跳んで届く高さではない。
付近に台になるようなものはなく、猫に近付くにはこの木を登るほかない。
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