倉庫 GC-2
□細やかな秘密
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いつになったら、彼は気付くだろうか。
「ダリル、野菜を残すなといつも言っているだろう?」
僕は一つだけ、彼に隠していることがある。
「ほら、ニンジンも食べろ」
それは今の僕達にはとても些細なことで、けれど絶対に避けて通ることの出来ない真実で。
「大丈夫。美味しいから」
僕はもう何年も、その事実を告げられずにいる。
「ちゃんと食べないと、今日の夕飯はピーマンのニンジン詰めにするぞ」
彼は何も知らず、今日も僕に母親のような小言を漏らす。
「食べたらプリンで口直ししていいから、な?」
宥めるように、諭すように。
「ダリル」
だから僕は、いつまでも気付かないふりをする。
「いい子だ」
僕の頭を撫でる手が、既にこの世にないことを。
【細やかな秘密】