倉庫 GC-2

□あくまでパロディ リターンズ
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ある冬のことである。

「ローワン君、ちょっとここへ行ってきてもらえませんか」

唐突にそう切り出したオカルト研究家、嘘界=ヴァルツ・誠は、ローワンに一枚の写真を差し出した。
見たところ心霊写真ではないようで、そこには暗闇の中で花火を楽しむ若い男が写っているだけである。

「構いませんが……どこです、ここ?」
「N県の旧狭境トンネルだそうです」
「狭境トンネル……聞いたことのない名前ですね。また心霊スポットですか?」

オカルト研究家の助手を務めるローワンは、よく調査と称して心霊スポットに送り込まれる。先日は自殺の名所として知られる橋へ出向き、運悪く遺体を発見し警察に聴取を受けるはめになった。
またあんな目に遭うのはごめんだと、彼は隠すこともなく不快そうな表情を顔面に張り付けた。
けれど嘘界はあっさりとそれを否定した。

「今回は普通のトンネルです。霊が出るという噂は一切ありません。事故の記録も犯罪が発生したという事実もない、至って安全な一般道ですよ」

年間70万件の交通事故が発生しているこの日本にあって、一度も事故が起きていない。それはそれで怪しい気もしたが、とりあえずは普通の道であるという現実にローワンは安堵した。
問題はそこからだ。

「それで、至って安全な一般道に何の用があるんです?」

仮にもオカルト研究家などという怪しげな職に就いている嘘界が、何の変哲もない道に用などあるのだろうか。
嫌な予感がしてならなかった。
そんなローワンの心配など露知らず、嘘界は意地の悪い笑みを浮かべた。

「それは直接本人に訊いてください」

かくしてローワンは、旧狭境トンネルへと送り込まれたのだった。
 
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