倉庫 GC-2
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○嘘吐きの電話
ダリル・ヤンは嘘をついている。
「そんなに心配しなくても、僕は元気でやってるよ」
遠く離れたローワンに、電話越しに何年も。
『無理はするなよ?』
「してないって」
『そうか?』
「アンタは自分の心配だけしてなよ」
彼はずっと、隠している。
「僕なんか待ってないでさ」
自分がもう生きていないことを。
――――――――――
アンドレイ・ローワンは知っている。
「それでも待っているよ」
初めて電話をしたその日から。
『……アンタも強情だね』
電話越しの声を聞いた瞬間から。
「君に似てきたかな」
『言ってろよ』
彼はずっと、気付かない振りをしている。
「じゃあ、また」
握る受話器のその先が、何処にも繋がっていないことに。