倉庫 GC-2
□ごちそうさま
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まるで消毒するように首筋を舐る彼の息を感じながら、私は今日も漏れそうになる呻きを噛み殺す。
牙が肌を刺し、傷口が燃えるように熱を放つ。
自らの血が嚥下される度、彼の喉が歓喜の音をあげるのがわかる。
「そんなに、美味しい、かな?」
震える声でそう問えば、彼は吸血を止め鼻で笑った。
「なに?自分の血の味が気になるの?」
鼻につく血の香り。
決して美味しそうとは思えないその臭いに、私は顔を顰めた。
「味は知ってるよ。鼻血出したときに」
「なにそれ」
嘲笑し、彼はまた首筋に牙を埋める。
「酷い、なぁ……ッ」
突き上げるような自らの鼓動は、失われる血を補おうとより強く脈を打つ。
ぶるりと肩が震え、背筋を寒気が這い上がる。限界だ。
「吸い過ぎだ、ダリル」
柔らかな金糸に指を入れ、力の入らない手で彼の頭を引き剥がす。
彼は抵抗することなく牙を抜き、また首筋を舐って顔を上げた。
「ご馳走さま、ローワン」
その憎たらしいくも愛らしい笑みを前に、今日も私は甘い微睡みに沈む。