倉庫 GC-2
□復讐
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日も高い夏の午後、ローワンは喫茶店のカウンターに座り、アイスコーヒーを嚥下していた。
残された氷が涼しげな音をたて、傾けたグラスを滑り落ちていく。
それすら口内で噛み砕いた彼に、不意にマスターが声を掛けた。
「最近は物騒ですねぇ」
ローワンが顔を上げると、マスターは視線で店の奥のテレビを指した。
「通り魔だそうですよ。白昼堂々。可哀想に。まだ若い女の子だ」
テレビ画面には、昨日に起きた通り魔事件のニュースが映し出されている。
人でごった返した大通りの中で少女が刺殺されたその事件は、今日も世間の注目の的だった。
何よりマスコミが食い付いたのは、殺害された少女がかつて葬儀社に属していたという事実だった。
警察の見方では、その件と今回の事件の関連性は低いとされている。
それでも世間は葬儀社への怨みを原因にしたいようだった。
「ひどい話だねぇ」
マスターは溜め息を吐いて、顔も知らぬ少女への同情を口にした。
ローワンはテレビから視線を戻し、眉尻を下げてマスターに返した。
「ええ、本当に」