倉庫 GC-2

□五ノ刻 奈落
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社を封じた中庭を抜け、刻宮の戸を開ける。
残念ながら、中に人の姿はない。
ダリルは辺りの様子を窺いながら、恐る恐る中に入った。
刻宮は生活空間ではないらしく、何か儀式を行う場所のようである。一階の奥には御簾で囲われた空間があり、その向こうには石の台のようなものが見えた。
天井部分は柱と階段があるのみで、その更に上に部屋があるようだった。
一階、二階共に人の気配はない。
となると、残る可能性は刻宮の地下部分。
ダリルは御簾の側まで近寄ると、閉じたそれを蹴り開けて中へと足を踏み入れた。
地図にある通り、そこには薄汚れた扉がある。これが地下へ続く道らしい。
そして足元には一枚の紙片が、扉に挟まるようにして遺されていた。
彼はそれを拾い上げ、記された文字に目を通す。

『死んでしまったのだろうか。いや、』

書かれているのはそれだけ。
だが彼は、この文とは別のあることに気付いた。

「……これ」

思い出したようにポケットに手を入れ、最初に拾った紙片を取り出す。

「……やっぱり」

二つの紙片を合わせると、破れた辺がぴたりと一致した。
二つは元々繋がった一枚の紙だったのだ。

『死んでしまったのだろうか。いや、そんな馬鹿なこと、許されるはずがない』

それが本来記されていた言葉。
上の辺に千切られた形跡があるため、まだ他に前半部分があると考えていいだろう。

「何なんだろう、これ」

これまで拾ったものは全て、彼に何らかの影響を与えてきた。
これも意味があるもののはずだが、果たして一体何なのか。
悩んでいても仕方がない。
ダリルは二つの紙片をポケットに押し込むと、地下へと続く扉を潜った。
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