倉庫 GC-2
□五ノ刻 奈落
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朽ちた父の残り滓を前に、ダリルは呆然と立ち尽くしていた。
指に触れるのは微かな泥。もはや人の姿など何処にもない。
「パパ……」
思い出した瞬間に全てを失った。
大切なものは皆背を向けて去っていく。
それに「何故」と問うことすら、彼には許されなかった。
残されたものは一つ。
「追いかけなきゃ」
この屋敷の何処かをさ迷う、ローワンの背中。
それがダリルに残された唯一の道標。
端末を広げて地図を確認し、その行方に目星をつける。
回っていない部屋は幾つかあるが、もと来た道へと戻るとは考え難い。
ともすれば、可能性は二つ。
北の刻宮と表示された建物と、その隣にある皆神村なる屋敷。
どちらと決することは出来ないが、立ち止まっている暇はない。
「……行ってみるか」
まずは近い刻宮を目指し、ダリルは迷いない足取りで北側の戸を潜った。