倉庫 GC-2

□僕の相棒
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頭部を強く打ち付けたローワンは、異常音を発しながら、すぐに研究所へと移送された。
開発チームが総出でデータの復旧に当たり、メンテナンスチームは大破した基盤の修理に当たり。
その間何一つ情報を与えられることのなかったダリルのもとに、父であるヤン司令が訪れたのは2週間も後のことだった。
その頃ダリルは既に軍属となり、予てより決められていたエンドレイヴのオペレータとして調整を受けていた。
彼の乗る最新型の機体は未だ完成には至っておらず、ひたすらゴーチェで戦闘訓練を繰り返す日々。
そんな彼のもとを訪れた父は、まず最初に偽らざる現状を述べた。

「ローワンのデータが復元された」
「本当!?」
「本当だ。最も新しいバックアップデータを基に、故障直前のメモリーを結合させる形で修復することが出来た」

一見すれば、それはダリルにとって朗報だった。
データが無事であるならば、彼と再び話すことが出来る。
けれども父の次の言葉は、彼の期待を地の底へと突き落とした。

「だが体の方は駄目だ。頭から頸にかけて、無事な部品が一つとして無い状態だった。ひび、欠損、大破。どれも替えの利かないオーダーメイドだ。あの体はもう、破棄するしかない」

ローワンはもう直らない。
それが大人達の結論。

「何でさ!機械なんだから、また部品を作れば直るはずだろ!?」

理解出来ないと食って掛かるダリルに、父はゆっくりと頭を振る。

「アレは人間の遺体を基に特殊な技法で加工され作られた、この世に一つしかない入れ物だった。なまじ人が基になっているだけあって、似たような入れ物を作ることが出来ても同じものは作れない」

人体を基盤に作られた機械。それがローワンの搭載された入れ物の正体。
数年前に死亡した研究者が、自らを素材として提供したことでようやく完成した傑作。
二度目の死を経験した肉体は、もはやその機能を取り戻すことはない。

「……わかった。あの体じゃなくていい。だから、ローワンを直してよ」

ならば生き残ったデータだけでも、とダリルは父に懇願する。
肉体を失っても、彼の意識さえ、記憶さえ残っているのなら、と。
そんな息子の言葉を、父は待っていたのだろう。

「………ついてこい」

彼は我が子を引き連れて、とある研究所へと訪れた。
そこはダリルが乗るはずの、最新型のエンドレイヴを作る場所。
その中に通されて、ダリルは初めて“それ”を目の当たりにした。
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