倉庫 汎用

□黄金色の報酬
2ページ/4ページ

以前と同じく木の下で、彼女は弁当を広げ始めた。
女子高生(ではないのだろうが)にはいささか多過ぎるおかずの量に軽く引いたが、はじめから複数人と食べる気だったのかと好意的に解釈を試みる。

「時真さんは、料理は得意ですか?」

割り箸を俺に差し出しながら、彼女が唐突に尋ねてきた。

「俺は……」

俺は答えに窮した。
料理ならそこそこ出来ると自負している。
だが役の設定上、それは“アリ”なのだろうか。
今の自分のポジションは料理が出来ていいのだろうか。
小夜は今、察するに料理に目覚めている。ここで仮に得意だと口にしたら、彼女はどう反応するだろうか。

「時真さん?」

逡巡する俺に、彼女は不思議そうな顔で小首を傾げる。

「え、あ、そうだな。料理は、そこそこ」
「そうですか」

反応は淡泊だった。
いっそ悩んだのが馬鹿馬鹿しいほどに、それはただの世間話だったのだ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ