倉庫 汎用

□今日もいい天気
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○月×日、土曜日。天気は晴れ。
今日は自由に外を出歩いて良い日だと言われ、変な服を着た連中に部屋を追い出された。
日が暮れるまで中に入れてもらえないらしく、仕方なくぶらぶらと出歩くこととなった。




午前10時。
道を歩いていると、七原文人に会った。

「やあ、順調にやってるみたいだね」

買い物の帰りらしく、彼の手にはビニール袋が幾つか提がっていた。
買い物くらい部下にやらせればいいのにと思ったが、口に出すのはやめておいた。

「そうだ。頑張ってる君に、ご褒美」

去り際、彼から缶ジュースを貰った。
見慣れた炭酸飲料だった。
礼を言って蓋を開ける。

と、中身が勢いよく噴き出した。

「あはははは。ひっかかった」

大人なんて嫌いだ。





午前10時半。
公園でジュースを洗い流していると、更衣唯芳に会った。

「どうしたんだ」

尋ねられ、一連の理不尽な悪戯を話した。
彼は哀れみに満ちた目で俺を見て、ハンカチを貸してくれた。

「その、なんだ――、気を落とすなよ」

余計惨めになったが、口にするともっと惨めになるので黙って頷いた。

「ときに、小夜のことだが――」

ハンカチを返すと、思い出したように彼は俺の肩を掴んだ。
痛かったが顔が怖かったのでやはり黙った。

「君は、その、小夜と――どこまでいったんだ」

どこまでも何も、大して話しもしたことはない。
強いて挙げるなら、無理矢理弁当を食わされた程度か。
そう答えると、肩を掴む力が一層強くなった。

「小夜は!小夜は!君にはやらんぞ!!」

なんでここにはろくな大人がいないのだろう。





午前11時。
コインランドリーに行くと、求衛姉妹の片方に会った。
ののかと尋ねると、ねねだと叱られた。
髪型でわかるはずだと言われたが、正直どちらがどんな髪型をしているかなど覚えていない。

「信じらんなーい!それで女の子が落とせるとでも思ってんの?マジ有り得ないんですケド!!」

紛らわしい顔をしているお前達が悪い。
そう思っても口にはしない。
言えば長くなりそうだ。

「よーく覚えてよ!こっちがねね。反対がののだから!」

左分けがねね。覚えた。
そう答えると、彼女は何故か気味の悪い笑みを浮かべて去っていった。
気になったが、構わず服を洗うことにした。





正午。
腹が減ったのでパン屋に入ると、また求衛姉妹の片方に会った。
髪は右分け。こっちがののか。
そう思って名前を呼ぶと、凄い形相で睨まれた。

「私ねねなんだけど。間違えるとかマジ有り得ない」

そんな馬鹿な。
パン屋を見ると、君が悪いと笑われた。
どういうことだ。

「右分けがねねちゃんで、左分けがののちゃんだよね」

当たり前のようにパン屋は言う。
自称ねねは白い目で俺を見る。
これはアレだ。
騙された。
コインランドリーで会った方がのので合っていたのだ。

「失礼で無神経な時真君は、お詫びにパン奢ってくれるよねぇ?」

コロッケパンとアップルパイ。占めて580円。
ぼったくりだと思った。
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