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□兄と妹
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俺には一人、妹がいる。
幼い頃から心臓に爆弾を抱え、そろそろ限界が近いのだと医者は言っていた。
移植をすれば助かる可能性はあるそうだが、それには莫大な費用がかかる。俺のささやかな収入では、妹の入院費を支払うだけで精一杯だった。
そんな俺に巡ってきたこのメインキャストの仕事は、まさに天恵のようだった。
上手い話には裏がある。そんなことは百も承知だ。
それでも妹の命を救う術(すべ)があるのなら、賭けてみる価値はあった。

蓋を開けてみれば、俺が飛び付いたその術(すべ)は悪趣味な実験でしかなかった。
少女の姿をした人外を箱庭で飼い馴らし、現れる化け物を退治させるゲーム。
そこにどんな目的があるかは知らされなかったが、きっとろくでもないことに違いない。
下手に首を突っ込むこともないだろうと、俺は最低限の仕事を黙々とこなしていった。
ただ少し、彼女に妹を重ねて同情した。
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