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□兄と妹
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お兄ちゃん、と呼ぶ声を最後に聞いたのはいつのことだろう。
すっかり着慣れた黒の制服に袖を通し、今日もくだらない学園生活が始まる。
この歳でまた学生服を着る羽目になるとは思わなかったが、どうせ回りも似たようなものだ。恥はすぐに消えていった。

俺に与えられた役柄は、あまり他のメインキャストやエキストラと交流しないものだった。
台詞はほとんどない。
やることといえば、クラスで一番最後に教室に入る――要は遅刻することくらいのもの。
それなりに授業を受け、休み時間は一人でふらつき、授業が終わればさっさと帰路につく。
この役に意味はあるのかと一時期は悩んだものの、金さえ貰えるならいいかと考えるのをやめた。
 
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