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□天邪鬼なニワトリ
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怒髪天を衝く。
そんな彼の頭の話。





【天邪鬼なニワトリ】





アッシュの髪型は変わっている。
邪魔ならば切ればいいものを、彼は前髪を雄鶏のように逆立てている。

「ニワトリみたいだよな」

ふと口にした言葉に、アッシュは素早く刺すような視線を飛ばしてきた。

「何か言ったか、レプリカ」

地を這うような低音だが、ルークは全く臆さない。
生来の鈍さから、気付いていないだけかも知れない。

「いや、なんかこう、前髪下ろした方がかっこいいのになぁって」

特に考えるでもなく返すルークに、アッシュは一度目を剥き、次の瞬間顔を真っ赤にして怒鳴り付けた。

「お前っ!!同じ顔の奴によくそんなことが言えるな!」

言われてルークはようやく気付く。
遠巻きに自分の顔を褒めてしまったらしいことに。

「そ、そんなつもりじゃねーよ!俺はただ――」

慌てて否定するも、アッシュは全く聞く耳を持たない。

「うるせえ!気持ち悪いんだよ、屑が!」
「アッシュ!違う、俺が言いたいのは――」

逃げようとするアッシュにどうにかして話を聞いてもらおうと、ルークは咄嗟に彼の髪を引っ張った。

「痛ぇな!なにしやがる!!」
「あ、悪い」
「だったら放せ、屑!」
「………嫌だ」
「こいつ――!!」

意図せず引っ張ってしまったが、折角捕まえたのだ。安々と放しはしない。
ルークはアッシュの髪を掴んだまま、一息に心根を彼にぶつけた。

「綺麗だなって思ったんだ!ほら、俺、レプリカだから髪の色が劣化して薄いだろ?アッシュみたいに深い赤じゃないから、折角綺麗なのに……勿体ないなと思って」

アッシュは一瞬間抜けな顔でルークを凝視し、次いで呆れたように溜息を吐いた。

「……お前、ガイに似てきたな」
「え?」
「なんでもない。忘れろ」

首を捻るルークに、アッシュは今度こそ背を向けて去ってしまった。




後日、グランコクマを行くアッシュの額には珍しく前髪が垂れ下がっていた。
「おや、アッシュの旦那、髪下ろしたんでゲスか?」
「……うるさい」
髪を透かした光のせいか、彼の顔はほんの僅かに赤く見えた。





天邪鬼なニワトリ
―――――――――
似ている二人の些細な違い

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