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□もしも願いが叶うなら
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窓から見上げる空の彼方に、鳥が自由に飛んでいる。
自由に。





【もしも願いが叶うなら】





もう7年になる。
外の世界を最後に見た日から。
本当は7年前なんて覚えていないから、オレは外の世界をよく知らない。
どんな色をしているのか、どんな匂いをしているのか、どんな人がいて、どんなものがあるのか。
オレの世界はこの家だけ。
海も山も、窓から見ているだけ。
「いいなぁ」
ぽつりと零した言葉に、何がと問う声はない。
「どうしてオレは、こんなところにいるんだろうなぁ」
7年前に誘拐され、それ以来叔父上はオレを屋敷に軟禁した。
母上はオレが心配だからと言ったが、オレにはよくわからなかった。
ただひたすら、外の世界に憧れていた。
自由が欲しくて、何度も抜け出そうとしては失敗した。
「お前、オレと代わらないか?」
空を飛ぶ鳥はこちらを見ることもなく、何処か彼方へ飛んでいく。
遠く、何処までも遠く。
「……いいなぁ」
もう一度呟き、オレは窓辺から離れた。
目の前に広がる世界は、あまりにも遠かった。





もしも願いが叶うなら
――――――――――
手にした先に何があろうと
 

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