倉庫 GC
□無題
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引き摺られるように病室から連れ出され、着いたのは狭い取調室だった。
そこにはヤン少尉と同い年くらいの少年が、背を丸めてぽつんと座っていた。
「お待たせしてすみません、桜満集君」
嘘界少佐が声をかけると、桜満集という名前らしい少年は一度こちらを向き、すぐに俯いてしまった。
この一見普通の平凡そうな少年の正体を知ったのは、このすぐ後のことだった。
「寒川君からのプレゼントです」
机上に映し出される幾つかの画像。
これらは全て、この少年を我々に通報した人物が提供したものらしい。
その中の一つを指し、少佐は少年に語りかけた。
「これは、恙神涯。葬儀社のリーダーだ。なぜ君のような少年がこんな所にいて、こんな男と話さなければならなかったのかな?」
少年は、一度はそれを見たものの、すぐにまた視線を外し俯いてしまう。
「そんなの、涯に聞いてください」
すっかり塞ぎ込んでしまった彼に、少佐は不満そうに息を吐いた。
「桜満君、ここのご飯はうまくないよ。あのソフト麺ってやつを僕は給食以来初めて食べました。その辺のことをよーく考えて話したまえ」
それきり、審問が終わるまで少年が口を開くことはなかった。
「どう思います?」
独房へ連行される少年を見届けると、少佐は突然私にそう尋ねてきた。
「どう、と言いますと?」
「君の目から見て、彼は仇に見えますか?」
「仇」という単語にピンとこなかったが、言わんとしていることは自ずと理解できた。
「少佐は“あれ”を、彼が一人でやったと考えておられるのですか?」
第三中隊を壊滅させた犯人が、あの少年だと言うのだ。
「とてもそうは見えませんが……」
「でしょうね。彼がそれだけの力を持っているのなら、こうして我々に捕まることもなかったはず」
「ですが、あの場所に居合わせたのは偶然ではないと思います」
「ほう」
あの少年が葬儀社と関係しているのはまず間違いない。
ただ引っ掛かるのは――
「仲間意識や忠誠心がない。そこが気になるのですよ」
まるで心を読まれたかのように、少佐は私の言わんとしたことを呟いた。
「歯痒いですねえ。また空欄が増えてしまった」
言葉とは裏腹に、その表情は心底楽しそうだった。