倉庫 GC

□君が守ってくれるから
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『敵、施設害へ離脱。退却を始めました』

葬儀社の襲撃が始まって2時間。早くも退却を始めた目標に、オペレーションルームは一応の安堵に包まれた。
ダリルを監督していたローワンもまた、同様に安堵の息を吐く、はずだった。

「やめろ、ダリル!」

突如響いた彼の怒声に、管制官達は何事かとそちらを振り向いた。
隣に座る管制官が彼の前のモニターを覗き込むと、そこには退却するシュタイナーを追うの一機のエンドレイヴの姿があった。

「もういい!深追いするな!」
『返せ!僕のシュタイナーを、返せえッ!』

無線の向こうのダリルはローワンの制止も聞かず、逃げ回るシュタイナーの追跡を続けている。
奪われた愛機を取り戻さんとする彼の執念は今、完全に暴走していた。

「いい加減にしろ!こっちで接続を切るぞ!」
『ふざけるな!取り返すんだ、僕の、シュタイナー!!』

言って聞くような状態ではない。
ローワンは溜め息を吐き、傍らの管制官と目を見合わせた。

「どうしますか、大尉?」
「やむを得ない。接続を切る」
「いいんですか?少尉、怒りますよ」
『返せ!返せ返せ返せ返せ、返せェ!!』
「これでは、な」

既に無線など聞いていないダリルに、傍らに座る管制官は苦笑いを浮かべて自分の席へ向き直る。
ローワンも眼前のモニターに視線を戻し、そこであることに気が付いた。

「何だ……?」

モニターの中には相変わらず、シュタイナーを追うダリルのエンドレイヴが映し出されている。その背景にある高台に、逃げも隠れもせずに立つ人影がある。
人影は何か大きな塊を抱え、それをダリルの操縦するエンドレイヴへ向けて構えた。

「まさか!」

思い至るその正体に、ローワンは即座に指を滑らせた。

「間に合え!」

その指が緊急ベイルアウトを実行するのとほぼ同時に、エンドレイヴは閃光に包まれた。



光が収束し、モニターに映像らしい映像が戻る。
その先の光景を目にした一同は、誰もが思わず息を詰めた。
映像の中のエンドレイヴは、脚だけを残して見事に熔解していた。熔けた装甲は鉄屑すら残さず、立ち尽くす脚だけがぽつんとその場にあるだけだ。その先にはまだ、この高出力兵器を放った何者かの姿があったが、ローワンはそれに目もくれようとしなかった。

『ヤン少尉、バックラッシュで損傷!』

椅子を蹴倒すように立ち上がり、彼は無言でオペレーションルームを飛び出した。
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