倉庫 GC

□名前を呼んで欲しかっただけ
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カチカチと、常のように嘘界が携帯端末のボタンを打つ音がする。
構わず報告書を仕上げていたローワンは、ふと嘘界の方を見た。

「相当気に入っておいでですね、少佐」
「ええ」

嘘界は端末から顔をあげることなく生返事を返した。
ローワンもすぐに自分の仕事に戻る。と、何の脈絡もなく嘘界は彼に尋ねた。

「一年で一番日の長い日は?」

モニターに指を這わせたままローワンは答える。

「夏至、ですか?」
「そうですね」

クロスワードの答えにでも詰まったのかと、ローワンはあまり気にかけなかった。
だが嘘界の質問は続く。

「晴れているのに雨が降る現象の俗称は“狐の”何?」
「……嫁入り」
「鶴は千年。では亀は?」
「万年ですが……少佐?」
「いいから。私が今はまっているものは?」
「クロスワード」
正解不正解を知らされることもなく、質問は矢継ぎ早に出題される。

「晴天の?」
「霹……靂……」
「Take a key and♪」
「Lock her up?」
「嘘から出た?」
「まこと」
「…………」
「…………」

沈黙した後、嘘界は端末をぱたんと閉じた。

「ふふっ」
「えっ!?少佐??」




(名前を呼んでほしかっただけ)
 

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