倉庫 GC

□最悪で最高な祝福
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貸し切られた店内に暖色の照明が染み渡る中、ダリルは独りバースデーケーキの前で唇を噛み締めていた。

「………っ」

楽しみにしていた誕生日だった。
多忙な父と久し振りに会えるとあって、彼は内心はしゃいでいた。
だからこそ、反故にされた哀しみは彼に重くのし掛かった。
噛み締めた唇から漏れそうになる嗚咽を、意地と矜持で懸命に抑え込む。
だがそれも限界だった。

「パパぁ……」

冷たい携帯端末を握り締め、情けない声をそっともらす。
まさにその時、ダリルの頭を何者かがくしゃりと撫でた。

「!?」

物音もなく現れたそれに驚いて振り返ると、頭を撫で回していた手は不意に彼の頬を摘まんだ。

「なーに泣いてるんだ、ダリル?」
「こんばんは、少尉」

そこには場にそぐわない軍服姿の、ローワンと嘘界の姿があった。
二人は呆然とするダリルの横を通りすぎると、断りもなくそれぞれ椅子に腰かけた。

「少佐、上着預かりますよ」
「すみませんね」
「にしても、結構量ありますね。上から順に取り分けましょうか」
「まずはロウソクが邪魔ですね。退けましょうか」
「じゃあここに置いてください。あ、すみませーん、飲み物お願いしまーす」

先客を差し置き、二人は好き勝手に飲み物を注文してはケーキを切り分けていく。「Happy Birthday」と書かれたチョコレートの板は真っ二つに折られ、それぞれ嘘界とローワンに食べられてしまった。
ようやくダリルが我に返った頃には、3段あったはずのケーキは2段に減り、その2段目も半分が切り崩されていた。

「ちょっと、何勝手に食べてるのさ!」
「ぼーっとしてるからだ」
「食卓は常に戦場ですよ」

ダリルの一喝もどこ吹く風。二人は彼をニヤニヤと笑いながら、遠慮なくフォークを動かしケーキを削り続ける。

「くそっ!!誰のケーキだと思って!」

このままでは自分の分がなくなってしまうと、ダリルも半ばヤケクソでフォークを手に取る。

「苺返せよ!」
「早い者勝ちですよ」
「ほら、こっちにまだあるから……」

行儀の悪い争奪戦の果てに、テーブルクロスには生クリームやスポンジの残骸が飛び散る。
口汚く罵声を飛ばすダリルの顔は、けれどどこか楽しげでもあった。
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