倉庫 GC

□最悪で最高な祝福
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モニターの電源を落とし、ローワンは目頭を指で解しながら長い息を吐いた。
いっそう薄暗くなった室内には、嘘界が端末を弄る音が響いている。
ローワンは一度大きく伸びをすると、机の上に無造作に置かれた自分の携帯端末に視線を落とした。
端末のサブディスプレイに表示されている時間では、とうに彼の勤務時間は過ぎている。背後で端末を弄っている嘘界も、既に帰宅して良い時間のはずだ。
自分が仕事を終えるまで付き合ってくれたのだろうかと、彼は少しだけ申し訳なく思った。

「少佐、そろそろ――」

振り返り、嘘界に声をかけようとしたところで携帯端末が鳴り出し、ローワンは慌ててそれを開いた。
画面に表示された見知った名前に、彼は慌てて通話ボタンを押す。

「もしもし?」
『…………』

応答はない。

「もしもし?ダリル?」

相手の名を呼ぶが、聴こえてくるのは微かな息遣いだけ。
訝しみ、ローワンは一度端末から耳を離し画面を確認する。
表示されている名前は「Daryl Yan」。間違いなくダリルだ。

「どうかしましたか」

ローワンが首を捻っていると、いつの間にか彼の前に嘘界が立っていた。

「あ、少佐。ヤン少尉からなのですが……」

お手上げとばかりに、ローワンは自分の携帯端末を嘘界の耳に当てる。

「聞こえます?」
「………何も」
「ですよね」

嘘界にもダリルの声は聴こえない。
ローワンは再び自身の耳に端末を当て、電波の向こうにいるであろうダリルに声をかける。

「何かあったのか?」
『……………』
「ダリル?」
『…………ぅ』

微かに、嗚咽のような音が漏れ聞こえた。
たったそれだけのことだが、それだけで十分だった。

「……わかった。すぐそこに行くから、絶対に動くなよ」

ローワンは一方的に言い切ると、すぐさま通話を終了して端末を閉じ、嘘界へと向き直った。

「というわけで嘘界少佐、これからお時間宜しいですか」
「構いませんが、場所はわかっているんですか?」

嘘界は訝しげな目で彼を見る。
対するローワンはというと、閉じた端末を目の前に持ち上げて不敵な笑みを浮かべた。

「5分で特定してみせますよ」
 
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