倉庫 GC

□軍人と海
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かくして、彼等は海に来ていた。

「紫外線が……メラニン色素が……」
「この交通費……経費で落ちるかな……」

燦々と輝く太陽の下で、萎びた草木のように項垂れるのはダリルとローワン。

「……どうして私まで」

逃げきったかに見えた嘘界までもが、問答無用で連行されていた。

「どうした、元気がないぞ!」

一人元気を振り撒くダンは、白い歯を輝かせてダリルとローワンの肩を叩く。

「今日は無礼講だ!共に汗を流し、語らい、熱い絆を作ろうじゃないか!」

加減を知らないその掌に、二人は叩かれた肩を押さえて顔をしかめる。

「それで、ミスター・ダン、具体的には何をすれば……?」
「それならもう決めてあるぞ!」

ローワンの問いに、ダンは親指をたててウインクを返し、言った。

「ビーチバレーだ!」

波の押し寄せる音に混じり、エコーがかかったようにダンの声がこだまする。
一同は一瞬表情を失い、次いで各々如何ともしがたい心情を面に表した。

「ビーチ……バレー?」

ローワンは眉をひそめ、

「…………」

ダリルは言葉もなく額を押さえ、

「審判は私が務めましょう」

嘘界は迅速に逃げ道へ駆け込む。
即座に逃げ遅れた二人が嘘界へガンを飛ばすが、生憎と彼はそれを気にするほと繊細な心の持ち主ではなかった。

「なんで僕がこんなことしなきゃいけないのさ」
「明日筋肉痛だろうな……」

いくら泣き事を口にしようと後の祭り。

「さーあ!ガッツ出して行こう!」

ダンの高らかな号令のもと、地獄のビーチバレーの火蓋は切って落とされた。



嘘界の離脱により奇数となった人数に、ダンはハンデとしてダリルとローワンにペアを組むよう指示した。更に士気を上げようと、彼は景品として有給を3日分用意した――のだが、それらが勇敢な対戦者に贈呈されることはなかった。

「ゲームセット。25対12でイーグルマン大s――」
「ダン!」
「―――、ミスターダンの勝利です」

健闘虚しく、試合はダンの圧勝に終わった。
顔面レシーブを連発したローワンの眼鏡は柔らかいビーチボールのおかげでどうにか無事生還を果たしものの、当の本人はダリルの足許でぐったりと伸びていた。

「ちょっと、邪魔だからここで寝ないでくれる?」

ダリルに爪先で軽く蹴られても、彼は起き上がることができず「あー」だの「うー」だのと呻き声を漏らすばかり。
溜め息を吐き、ダリルは額に張り付く前髪を掻き上げた。

「もう、帰りたい……」
 
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