倉庫 GC

□レトリック
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静まり返った廊下に腰を落とし、ダリルは呆然と虚空を見つめていた。
抱えていたヘルメットが腕から転げ落ち、リノリウムの床をがらがらと滑る。
その小さな音すら響き渡るほど、辺りは静寂に包まれていた。
今頃外では大掛かりな葬儀が執り行われていることだろう。
自分達が殺した者達を、白々しくも盛大に弔うのだ。
そこには彼の父の遺体も、立派な棺に入れられて並んでいるに違いない。
ダリルはそれを昂然と見届けられるほど大人ではなかった。
ヤン少将を殺したのは彼自身だった。
殺せと命令を受けた上でも、そこに個人的な恨みがなかったと言えば嘘になる。
それでも父だ。
例え愛されなかったとしても、確かに父だったのだ。

「パパ……」

己が膝を抱き締め、消え入りそうな声で彼は呼んだ。もう二度と会うことのない、大好きで大嫌いだった父親を。
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