倉庫 GC

□Simulation
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「すみませええええええん!!」

空に轟く謝罪の声に、抜かれたヴォイドが掲げられる。
鋏のヴォイドを探す集が繰り返す暴挙の中で、それは発現した。
顔も見知らぬ少年の中から、集が引っ張りだしたヴォイドは携帯ゲーム機。ペンでタッチして操作するタイプのようだった。

「また違った……」

なかなか見付からない鋏に肩を落としながらも、彼はゲーム機の電源を入れてみる。
軽快な音楽と共に、画面には地図とタイトルらしきものが表示される。

「“Simulation”……?RPGかな?」

解説も操作方法もないため、どんな効果があるのかを知ることはできない。
集は首を傾げながら、付属のペンで軽く画面を突いた。
次の瞬間、ポンと音が流れて画面が切り替わる。

「うわっ!なにこれ」

次に表示されたのは古めかしい時計の画像。その左下にOKと書かれたボタンがある。
時刻の設定だろうかと、集は時計の針を現在の時刻に合わせる。

「今は……1時50分、と」

OKを押すとゲーム機は再びポンと音を出し、今度は9つのボタンを表示する。
今度は画像ではない。アルファベットのようなギリシャ文字のような、普段は見慣れない言語で何かが記されている。

「ほ、ホー……?なんだこれ?」

読めそうで読めない。
早々に解読を諦めた集は、適当なボタンを押して次へ進む。
海から山にかけての断面図、6つの異言語で記されたボタン、4つの異言語で記された文。理解することを止めてしまえば、決定は早かった。
全ての画像で選択を終えると、最後に表示されたのは“Good luck”のメッセージ。
ようやくゲームが始まるのかと、集はペンを握り締める。
ところが、ゲームは始まるどころか画像の照明を落とし、仕舞いには電源までも落ちてしまった。

「あれ?」

振っても叩いても、再び電源が入る様子はない。

「なーんだ」

つまらなそうに呟くと、集はゲーム機のヴォイドから手を離した。
きらきらと光輝きながら、ヴォイドは少年の胸へ吸い込まれて消えた。
 
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