倉庫 GC
□小話
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この数ヵ月で、事態は大きく変化した。
葬儀社の台頭。上官であるグエンの死。アンチボディズを率い、クーデターの片棒まで担いだ。
その間何度、この手の報せを聞いたことだろう。
「嘘界局長が、殉職されました」
それでもこの感覚には、未だ慣れることはない。
「そうか」
最後に見た彼の顔は、宝物を見つけた子供のように生き生きとしていた。
これまでも何度かそんな顔を見せ、その度に前線に出て周りをひやひやさせたものだ。
だから本当は、いつかこんな日が来ると覚悟はしていたのだ。
それでも悲しくないわけではない。
悔しくないはずはない。
「局長は、どんなだった?」
「は?」
「局長の最期は」
「記録が残っていないので、なんとも」
「……そうか」
同行した兵士は全滅。
最後は単身敵地へ乗り込み、嘘界は遺体となって帰還した。
死因は焼死と見られるが、実のところよくわかってはいない。
嘘界が如何に戦い、如何にして死んだか。知る者は仇のみだ。
「次は我々の番かも知れませんね」
ぽつりと、兵士が呟く。
「縁起でもないことを」
「わかりませんよ。何せ今はあの“涯様”がトップなんですから」
兵士はおどけた様子で、けれど隠しきれない不安と恐怖を顔面に滲ませていた。
それもそうだろう。
敵であった恙神涯が頂点に立ち、ダァトと称する得体の知れない秘密結社に牛耳られ、付き従ってきた上官は無惨な死を遂げた。
何も知らされぬまま、状況だけが刻々と変化していく。
だが自分達に引き返す道はない。
クーデターに加担し祖国を裏切った自分達は、二度と故郷の土を踏むことは許されない。
この戦に敗れたならば、反逆者の汚名を背に、異国の焦土で死に絶えることだろう。
「心配するな。私の目の届くうちは、むざむざ死なせたりしない」
そうだ。易々と死なせはしない。
死んでいった者達のためにも。
「信頼してますよ」
信じて付いてきてくれた部下達のためにも。