倉庫 GC

□待ち人来たりて
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翌日は雪も止み、雲の間から太陽が顔を覗かせた。
いつものようにダリルの点滴を替えたローワンは、近所の農夫の頼みで発電機の修理に出向いていた。
故障の原因はメインノズルの詰まりらしく、解体から清掃、組立後の作動を確認までを済ませ、お礼の野菜を受け取った。
これだけあれば、今日の夕食は豪華になるに違いない。そんなことを考えながら、ローワンはいそいそと帰宅の途につく。
点々と残る水溜まりを跨ぎ、鼻唄混じりに門を潜り、玄関の前に野菜を下ろす。
ポケットから鍵を取り出し、左手でドアノブを掴む。
そこではたと気付く。

「……あれ?」

鍵が開いている。
さてはかけ忘れたかと、ポケットに鍵を仕舞い野菜を抱え直して中へ入る。
そうして室内に目を遣り、ローワンは今度こそ異常に気付いた。

「なんだ、これ」

中は誰かが暴れた後のように散らかり、幾つかの引き出しが引っくり返されていた。
廊下には割れた花瓶が散乱し、水浸しになった床面に無惨にも花が転がっている。
まさか空き巣でも入ったのか。
動揺で動きを止めたローワンは、腕の中から野菜が落下する音を聞き、はっとして顔を上げた。

「そうだ、ダリルは!?」

2階には動けないダリルがいる。
もし空き巣が入ったのなら、動けないダリルが危害を加えられない保障はない。
彼は慌てて階段を駆け上がり、壊れそうな勢いで部屋の扉を開ける。

「ダリル!」

そこにダリルの姿はなかった。
倒れた点滴台と、床に落ちたカレンダーが、この部屋でも何かが起きたことを告げていた。
ローワンはひゅっと喉を鳴らし、踵を返して階段を駆け降りる。

「ダリル!どこだ、ダリル!?」

呼んで返事が返るはずはなかった。
それでも彼はダリルの名を呼び、次々と部屋の扉を開けてはその姿を探した。
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