倉庫 GC
□届かない指先
2ページ/2ページ
崩れ落ちた施設を前にして、ダリルは呆然と地面にへたり込んでいた。
辺りに声はなかった。
悲鳴の一つも聞こえなかった。
恐ろしいまでの静寂に、ダリルは薄く開いた唇から嗚咽ともつかない声を漏らした。
全部、なくなってしまった。
武器も、敵も、自分を想ってくれた人も。
「ダリル」
どこかで誰かが言った。
「泣くなよ、ここにいるから」
誰かはダリルの背後に歩み寄ると、震える彼の背中にゆっくりと手を伸ばす。
「独りになんてしないから、そんな悲しい声で泣かないでくれ」
ダリルは気付かない。
「頼むよ……」
泣きそうな顔で笑うローワンに、気付かない。
「ダリル」
伸ばした手はダリルの背を通り抜け、虚しく空を掴んだ。