短編系2

□極彩色の舌
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暑かった。ただ、むしむしとじめじめと、暑かった。額から汗が噴き出る。汗は額から滴り落ち、首筋を流れ、胸元、背中をつうーっと流れた。非常に不快だ。
こんな時に、限って、嫌な目にあったりする。私はただ、早くこの炎天下から抜け出したい。早く用事を済ませてお家で涼まりたいというのに、目の前にはガラの悪そうな海賊さん達がたむろされていた。彼らは熱くないのだろうか。私はこんなに汗をかいているのに。ああ、イライラするわ。

「よお、そこのお嬢ちゃん!ご機嫌斜めか?」

声がした方面を見れば、そこにはこの暑さをさらに際立たせる髪色をした、赤毛のおじ様が立っていた。

「ええ、まあ、そうですね、そうなりますね。海賊さん」

冷たく言い返せば、彼はにっかりと笑い、手厳しいなあ、と笑った。彼の笑顔は、乾いていて、からからとした大地を思い出させた。ああ、また熱くなってしまった。早く帰りたいものだわ。
私は挨拶もそこそこに(というか海賊さんのお遊びみたいなものだろうが)家へと急いだ。

「あー!ちょっと待ってくれよ!悪かったって!」
「まだ何か御用でして?」

彼に呼び止められたせいで、ぶわりと汗が噴き出した。ああ、だから立ち止まりたくなかったのに。いやだ、汗臭かったらいやだ。
彼はこっちにどんどん近づいてくる。彼に香ってしまったら、いやだわ。

「いや、ほら暑いだろ?だからさ、一緒にお茶でも、いや氷菓子でも、食わねえか?!」



極彩色の舌


(うわ、冷って!)
(慌ててお食べになるから、ですよ)









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