短編系

□輪
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何もかも昔とは違う。
雪が淡々と積もる。其の様はまるで人の記憶と同じだと嗤う。積もり積もって、そして跡形もなく忘れ去られる。
彼らはきっともう昔の事なんて忘れてしまったのだ。
だが私は忘れない。二人と過ごした思い出を。
城下町をふらりと歩けば、目に入るのは下品な三文芝居。果たして結末は悲劇なのか喜劇なのか。私には知る由もない。
城下町をすぎ、少し歩けば浜辺が見える。この海を争い、今日も二人は昔を忘れ戦う。虚しいとは判っていても黙っている。許して。
奪い合って、傷つき傷つけ、残るのは一体何なのだ。
それでも未だ二人を愛しいと感じている。私は答えには気付いている。

「元親、元就・・・」

冷たい海の水面は私の血の気の無い顔を写す。
一歩踏み出す。
また、一歩。一歩。
二人が戦い続ける真実に興味はない。
私はただ、昔のように3人で居たかった。それはもう絶対にかないはしないのだ。
叶わないのなら二人が争い続けるこの海に居たい。もう見て居たくはないのだ。二人が争う姿なんて。
左様なら。
揺らぐ水面は遥か頭上に見える。きっと皆おんなじ答えのはず。
生まれ変われたら会いましょう。そしたら今度は、今度こそは。

「3人で一緒に居よう」





(また、会おうね。元親、元就)

引用&BGM:東京事変・遭難


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