短編系

□廻
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酷く長い夢を見ていたのだ。夢の内容は、とても昔のことだった気がする。

「いつまで大口開けて寝ているつもりだ」

其の声で自分はまだ目を瞑ったままだと思いだす。なんだか酷く重たい瞼を開けると、不機嫌そうな顔と太陽の様に眩しい笑顔が其処にあった。

「ははは!よお、もう授業終わっちまったぜ!」

授業、という単語に反応して顔を上げると太陽に陰りが生じた。

「お前、目真っ赤だぞ?大丈夫か?」
「大丈夫。少し寝すぎただけだから」
「午後の授業すべて昼寝に費やしたからな」

元就の小言を聞きつつ、帰りの支度を慌てて済ます。たしかに、もう窓は一面夕焼けに染まっていた。

「何か悩みでもあるのかぁ?何なら俺が聞いてやるぜ?」
「平気だよ。それよりも!元親の恋の悩み、聞いてあげる!
ねえ、彼女さんとはどうなった!?」

下駄箱から外靴を出し、上靴をしまう。元就はさほど興味がなさそうに本を読んでいる。

「ははっ・・・。まーた振られちまってよ!」
「そっか。まあ、元親は良い男だからね!またすぐ彼女できるよ!」
「おう!そうだな!!」
「暑苦しい男、の間違いじゃないのか」

あたりに三人分の笑い声が響きわたる。それだけがなんだか酷く幸せに思えた。

「じゃあ、また明日ね」
「おう!気ぃつけろよ!!」
「ふんっ。お前は間抜けだからな」
「失礼だなあ。ねえ、」
「何だあ?」
「また明日も三人で学校行こうね」
「おう!!当たり前ぇだ」
「ふんっ。帰るぞ」

それぞれの道を二人は帰ってゆく。くるり、と後ろを向き自分の家路につく。
そのまえに、少し寄り道をする。かわいらしい封筒を手に持ち、目的の家のポストにごく自然に投げ入れる。中身は封筒のかわいらしいデザインとは合わない、酷く汚いものが入っている。こんなことは出来ればしたくはない。だけどあの子が悪いんだ。元親に近づくから。折角今度は三人一緒に居られると思ったのに。邪魔をする方が悪い。
今まで元親と元就に色目を使った奴、告白した者全員がろくな奴じゃあなかった。私は其処をうまく突き止めただけだ。私は悪くはない。
ああ、元親元就。
今度はずっと一緒に居られる。
あはははははははははははははっはははっはははははっははっはhhhhh。
ずううううううううっと一緒だね。





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