短編系
□もやもや
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若い、というのは実に愚かでどこか品にかける。それが目の前に嬉々として座っている男が私に対しての評価だ。悔しいことに私は此の男の敵で、現在は両手両足を縛られている。不覚を取っただけだ。本当に油断しただけなのだ。じゃなければこんな男に私が捕まるわけがない。・・・云い訳なのは自分でも分かっている。でも負けを認めたくはない。だってこれじゃあ我が主君に申し訳が立たない!
「ほう、卿はこんな状況でも負けを認めないのかね」
笑いを含みながら発せられる言葉に苛々する。畜生め。まったく憎たらしい。負けてなんかねえ、と言葉を返せば男は大きく笑った。
「まったく、血の気が多いこといだ。主君の独眼竜譲り、って所かね?」
不愉快、不愉快なのだ。こんな男に不覚をとった自分も。此の男の優しい目も。本当はそれほど強く縛られていないことも。手の内側に隠しておいたクナイに気付かないふりをしていることも。
自分が悔しいと思っているのは、本当に此の男に勝てないからだけなのかわからなくなってきた。なんてまどろっこしい感情なんだ。畜生め。私はどうしたらいいんだ!ああ、政宗様!
ああ、本当になんだか
もやもや
(ちくしょおおおおおお!)