短編系
□赤ずきんの悲恋
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一日が終わり普段はすぐに家路につく。目覚まし時計が鳴り響く朝も、退屈な午後の授業も終わり、家路につくこの瞬間は至福の時とも言える。
だが今日は違った。お使いを頼まれたのだ。
足腰の弱いおばあちゃんの様子を見るという簡単なものだ。
簡単だからこそ、少し寄り道してしまいたくなる。
(お花を買って行くぐらいならいいよね)
おばあちゃんの好きな向日葵を買って、私の大好きな赤い色のリボンを結んで貰っていたらいつの間にか空は夕焼けに染まっていた。
(遅くなってしまった)
少し急ぎながら、おばあちゃんの家に向かう。
やっとの思いで家にたどり着けば、見知らぬ男の人が立って居た。
「どちら様ですか?」
そう聞けば男の人は少し驚いた顔をした。よく見れば男の人の頬は濡れていて、唇はすっかり青ざめていた。
「どうかされたんですか?」
「いや、大丈夫だよ」
そう言って微笑む。
「あの、良かったらこれ…」
手にあった向日葵の花束を差し出せば、男の人は先程よりも、驚いた表情をして見せた。
「はは、こんな可愛い子から花束貰えるなんて、俺様まいっちゃう」
少しだけ悲しそうな表情がほぐれた気がした。
「じゃあ、もう俺様行かないといけないから」
「あの、」
「また会えますか?」と聞けば、彼は笑って頷いた。
彼の背中を見送る。
べっとりと血の着いた背中と顔と、手にもっていたナイフは見ないことにして。
赤ずきんの悲恋
赤ずきんは叶わない恋に身を投じるのでした
めでたしめでたし