短編系
□永遠を謳う楽園
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「そうなのでしょうか」
目の前の女は包帯に身を包まれた男に問う。怖気づきでもすればいっそ可愛らしいものをこの女は、無表情で図々しくも男に問うのだ。
「何がだ?小生が答えてやろう」
また一人図々しい男が来た。男は女との間に割り込みさあ何でも質問しろと言わんばかりに、鼻息を荒くする。
「永遠は本当に存在しないのでしょうか」
また、こいつは突拍子もないことを聞くものだと、刑部は思った。
「なんだ、お前さんはなにか永遠なものが欲しいのか?」
「いえ、欲しいのではなく」
女は話を続ける。
「私の誰かに対する思いは何時か変わってしまうのだと考えたらなんだか悲しくて」
それは、それはつまり。
「なんだ!お前さん、想い人がいるのか!誰だ!誰だ?小生に教えろー!」
官兵衛は興奮し切った様子で女い押し迫る。刑部はそれをさめざめとした様子で見ていた。
彼女も想い人の一人や二人、居たって別に可笑しくは無い。刑部はそれがなんだか面白くなかった。
「ええ、私大谷様にどうやらそういう感情を持っているらしくて、って大谷様、黒田様。聞いていらっしゃいますか?」
その言葉に刑部は黒田のあほ面もからかう余裕の無いくらい驚いた。
思わず背後に浮遊していた数珠も落としたほどだ。
「ぬ、主は一体何を」
「え、だめですかね。私貴方を永遠に愛したいと考えているんですが」
「そ、それはつまり、お前さん刑部に結婚を申し込んでいるのか!?」
はい、と女は良い笑顔でうなずいた。
「やれ、主は我の永遠の揺らぎない愛が欲しいか?」
「はい、私は貴方を永遠に愛しますから、どうかその愛を私にくださいな」
「・・・本当に良いのか?我の様な・・・」
ふと目の前の女を見やれば、女は真剣そのものだし、これ以上の質問は無粋だと刑部は静かに口を閉じた。
にこにこと笑う女に手招きをしてやれば、女は此方に何の迷いもなく駆け寄ってきた。その頬に恐る恐る手を伸ばせば、自分からすり寄ってくる。
不幸が無い日も悪くは無い、そう刑部は考えながら、女の頬を撫でまわす。
それにしても黒田官兵衛、良いとばっちりだ。なぜじゃーとお馴染みの叫びはもう二人には聞こえていなかった。
永遠を謳う楽園
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