短編系

□よくある、朝の色褪せて見える光景
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おはようとあいつは言った。
俺は何も答えない。あいつは少し表情を曇らせたが、それはほんの一瞬のことだった。
朝日が目に眩む。
朝食の目玉焼きを口にするでもなくフォークでぐちゃぐちゃにする。
あいつは笑って俺に何かを喋っている。頬杖をついて、只ひたすらぐちゃぐちゃにした目玉焼きを見つめる。
つまらねぇ女だな。
ふいに口に出た言葉はあいつの耳には入らない。
つまらない女。つまらない食卓。
一晩の情熱はあっさりと去り、昨日此の手に抱いたはずの女は、色褪せて見えた。
此の女に会うことはもうないだろう。
原型をとどめていない目玉焼きを一掬い、口に運べば、
やはり味気なかった。



よくある、朝の色褪せて見える光景








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