短編系

□落 陽
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「また消えていくね」
「ああ、そうだな」
「政宗は悲しい?」
「・・・」
「ごく当たり前に消えていく人間は儚いね」
「ああ」
「私ももうすぐ消えるね」
「消えねえよ」
「どうして政宗にそれがわかるの?」
「消えねえし、消えさせねえよ」
「ああ、政宗は相変わらずだね」
「どういう意味だよ」
「生きているって、確かなことなのかな」
「ah?」
「私には生きているのが良いことなのかわからないね」
「・・・」
「政宗、私は確かに生きているのかな」
「・・・消えんな」
「ああ、でもそういえば私は一年前に死んだんだ」
「ここにいるじゃねえか」
「本当は政宗もわかってるくせに」
「お前は生きてる」
「死んだよ。政宗をかばって、銃に撃たれて死んだ」
「おいてくなよ」
「さよならはいらないね」
「やめろ」
「泣かないでよ。もうすぐ太陽が昇るから。
 うれしかったよ。政宗に会えて、愛しんで、政宗の為に死んで」
「愛してる、ぜ。だから、いくんじゃねえ!!」

「さあ、もう笑ってよ。
 私の為に、笑って」



落 陽



彼女が最後に見たのは涙まみれの笑顔だった。

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