SEVEN KILLERS
□高き塔に眠るもの サン&キャサリン&メアリー
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雨が降っていた。
「この山には大きな湖くらいしかありませんよ?それに道も険しいし」
そんななか、山を見上げるようにして立っていた人影に気づいた青年は人影に話しかけた。
「知っている」
雨除けの布をかぶっただけの簡素な格好をした人影と目があった。自分に向けられた何の感情も写していない瞳は深い森の木々と同じ緑色。覗いている髪も同じ色だ。
「なら、止めておいたほうがいい。それに山に入るのにその恰好じゃ危険すぎる」
「お前何様のつもりだ」
「僕はこの山の近くに住む者として言っているのであって・・・・・しかも、女性一人で山を越えるつもりなら危険すぎます」
助言が気に障ったらしい。弓形のきれいな眉が不機嫌そうに少々しかめられた。しかし、初めて彼女の表情を見れた。
「とにかく、今あなたの恰好でこの山に入れることは出来ません。十月頃なら山菜は旬なのでその時期にお友達と来てください」
彼女は冷たい目で一度だけ青年を見ると山へ入って行った。
「ちょ、ちょっと」
残された青年はあっけにとられていた。そして、ふとこの地に伝わる人間に姿を変え
遊び歩くという精霊の話を思い出した。
しかし、そんなわけないと苦笑を浮かべ、首をかしげるともと来た道を戻って行った。