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□ACT.6
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――――ガチャ
部屋に入ってすぐに、悠人は微細の違和感を感じた。
何かが可笑しいと玄関を見下ろすと、エースの靴が脱ぎ散らかされている。
朝まではきちんと揃えて隅の方に置いていたはずだ。
それなのにまるで、一度外に出て慌てて戻って来たかのようだった。
ふと床を見れば、エースの数少ない私物である橙色のテンガロンハットが落ちている。
拾い上げて棚に置き、靴を脱ぐ。
片手でエースの靴も揃えながら、部屋の奥に視線を送った。
「あ……?」
暗くなったら普通電気くらいつけるはずなのに、部屋の明かりはついていない。
はてと内心首を傾げつつ、ゆっくりと足を進める。
真っ暗なリビングに光を燈して辺りを見渡すが、エースの姿は見えない。
キッチンのシンクに目をやれば、食器が水に浸してあった。
食器洗いはエースに課した仕事だったはずなのに、どうして今日に限って洗ってないのだろうか。
更に増す不審感に悠人は深いため息を吐いた。
とにかくエースを見つけ出さないことには始まらない。
風呂場や部屋を順番に隈なく探し、最後に残ったのは寝室のみだ。
ノブに手をかけ、悠人は扉を開くのをほんの少しだけだが躊躇った。
寝室からは呼吸の音さえ聞こえない。
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