□ACT.9
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一日というものは瞬く間に過ぎて行くもので、気付けば早くも悠人と共に職場へ向かう時間となっていた。

首を緩やかに絞めているネクタイに手を伸ばしながら、エースは先に外で待っている悠人に声をかける。





「なー変じゃねェ?」


「馬子にも衣装」


「そっか………って褒めてねェよ!」


「ほう、意味を知ってたのか」





ニヤリと笑みを浮かべる悠人にエースは心底不安になる。

初めてではないにしろ、スーツだなんて久しぶりに袖を通した。

やはりネクタイが気になるエースに、悠人は自分が見立てたのだから大丈夫に決まってると一声。

上から下まで一式を購入するときは驚きレンタルで良いと言ったエースだが、社会人ならば一着は必要だと悠人に諭され選んだものだった。


履き慣れない革靴を地面で軽く叩きながら、扉の外に出る。

戸締まりをする悠人の背中を何気なく眺め、ふうとため息を吐く。

柄にもなく少し緊張している自分がいて、可笑しく感じた。





――――バシッ





「辛気臭ェ顔すんな、背を伸ばせ」


「うっす」





前のめりに弛んだ背中へ一発、きつめの平手か入る。

それと同時に飛んでくる小言は緊張を解すためなのか、少しだけ優しい空気を持っていた。







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