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□コールブルーの粉末。
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今にも一雨来そうな雲行きの空に迎えられて、人波に揉まれ電車を出る。
帰りが遅くなった今日はいつにも増して散々な一日だった。
クレーム処理なんざ柄でもねェことをさせられ、更には超がつく問題児な新人の教育係?みてェなもんにならされた。
財務課のナミは予算ケチるしよ…苛々と歩きだそうとした俺を湿気た風がコンビニの袋を足元に絡ませて、阻む。
「あーくそ!」
そして畳み掛けるように、折りたたみ傘なんて持ってない俺を小馬鹿にして空から一粒。
嗚呼こいつは本格的に降ってきやがるなと思った矢先に、俺はそいつと出くわしたんだ。
「―――あ?」
駅前の出入口に胡座を掻いてギターを鳴らす男。その周りには、片手で足りる程の数の人間が立ち止まっている。
路上ライブ、と言う奴か。
普段の俺なら気にも止めないんだろうが、苛立ちと雨という足止めを喰らうだろうと言う予想が俺をその場に留めさせた。
「〜……っと、ありがとうございます」
疎らな拍手にも笑顔で礼を言うそいつは、はっきりと聞こえてきた雨音にむっと空を見上げる。
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