捧げ物

□木漏れ陽の中
1ページ/3ページ




よりかかる重みに、奈良シカマルは視線を隣にやった。

愛犬の赤丸を抱き、犬塚キバは静かに寝息を立てていた。

ごつごつと粗い感触の木の幹を背に、こうして二人で葉の間から漏れる光を眺め
るようになったのはどのくらい前からだったか。

一族以外、そこに立ち入る事の禁じられた奈良家の森は、凛とした静寂に包まれ
ていた。

隣で投げ出された足の膝に、小さな擦り傷を見つけて、シカマルは眉を下げる。

見栄ばかり張ってすっ転んでは強がってばかりいる。

ナルトに比肩する騒がしさで、ナルトよりも短気で切れやすい。

まるで自分とは合わない筈の人間を、この奈良家の森に入れたのは、ほんの気ま
ぐれでしかなかった。

年中木ノ葉の里を歩き回っているキバに、木ノ葉の中にまだキバの知らない場所
があるのを見せたかっただけだったのかもしれない。

家族に見つかれば、きついお灸を据えられる事は目に見えていたが、それでも、
と思わせる何かが、キバにはあったのだろう。



「ナルトはうっせーし、シノは何考えてっかよく分かんねぇ。でも俺、シカマル
好きだぜ。話すげー面白いし。」

ほんの些細な一言だ。

何の下心も無く純粋に好意を持たれた事が、シカマルには嬉しい反面、どこか怖
い様な気もした。

絶対に合わない筈の性格が隣にいるのは、気まずい様でどこか違った感覚があっ
た。

手に取りづらくて曖昧な感覚は、この隣のうるさい猛獣にしか感じなかった。

「…確かに、悪くねーな…お前といる方がいい…かも。」
「め、珍しいな、お前がそんな事言うの。」

ふと溢した言葉に、何故かキバが赤くなっていた。

「そんな珍しいか?つーか、熱?顔赤い。」
「ちょ、顔近付けんなっ!」
「痛って、殴んな!」

真っ赤になって遠ざかるから、こちらも訳が分からない。
突然熱を持った様な耳を押さえてシカマルはそっぽを向いた。

数センチの距離が気まずい。

「まぁ…気ぃつけろよ…」

小さな声だったけれど、キバが少しだけ頷いたから、まぁいいか、と陽の漏れる
樹々を見上げた。



.

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ