捧げ物

□年賀状は贈り物だと思う。
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「俺さ俺さ、今年初めてサクラちゃんから年賀状来たってばよーー!」

1月1日。
新年、元旦である。

「ナルトッ!お前何で年賀状に赤丸の毛なんか貼ってんだよ!いつ抜いた!?」
「こないだちょちょいっと…インパクトあるだろー?」

北風の吹くテラスの上に、ナルト、キバ、シカマル、チョウジは集まっていた。
名目は新年の挨拶。
皆それぞれ届いた年賀状を持ち合い、誰の一言が面白いか、などを話し合ってい
た。

「でも珍しいよね…シカマルがちゃんと年賀状出すなんて。」

話の途中、チョウジがぽつりと呟いた。

「でも一言が『今年もよろしく』しか書いてねーてばよ。」

ナルトがシカマルの年賀状を取り出し、ぼやく。

「年賀状なんてめんどくせーもんいちいちちゃんと書いてられっかよ…」

シカマルは溜め息をつき、ふとキバを見た。

「……?」

キバがじっとこちらを見ていた。
シカマルの視線に気付くとすぐに目をそらし、何度も何度も自分の年賀状の束を
見返す。
しばらくしてキバは小さく溜め息をつき、突然家の方へと歩き出した。

「おいキバ、どこ行くんだってばよ?」
「…俺、帰るわ。じゃ、また明日。」
「ちょ…」

突然のキバの行動に、更に言葉を募ろうとするナルトを、シカマルが無言で止め
た。
俺が行く、と耳打ちし、キバを追った。

いつの間にかキバは走り出していて、追いついた時には既に彼らは犬塚家の玄関
先まで来てしまっていた。

「おい、キバ。何が嫌でいきなり逃げ出すんだよ?」
「……た。」
「あ?」
「俺には年賀状、来て無かった!」
「…んだよ、そんな事か…。」
「俺だって、友達じゃねぇのかよ…」
「何もそんな事…」
「毎年シカマル年賀状なんかまともに出さねぇから、今年も来ねぇのは当たり前
だと思ってた。でも今年はナルトとチョウジには出してんだろ!」

言い募るつもり等無かったのに、どんどん言葉がついて出る。

「あのな、キバ」
「何で、俺だけ…なんか、仲間外れで…シカマルの馬鹿野郎!あっち行けよ!」

どうしてこんなにも怒りが溢れてくるのか分からなかった。

「おい、キバ」
「帰れって!もう、いいからよ!」
「…聞けってんだ!」
「痛っ!」

殴られたか、と思った。
けれどそれは大袈裟な勘違いで、実際は額を指で弾かれただけだった。

「だーもう、最初に渡しときゃ良かったんだろ!」
「何が」
「間に合わなかったんだよ、キバの!悩み過ぎて出せなかったんだよ、アホ!」

苛立ったシカマルの言葉と共に、一葉の葉書が投げつけられた。
葉書はキバの手をすり抜けて、足の甲の上に落ちた。

「…年賀状。」

そこには干支の絵とやる気の無い下手な字で数行、言葉が綴られていた。
『任務の時一人で突っ走るな』だとか『赤丸が俺に噛みつくのいい加減止めさせ
ろ』という年賀状に書くような内容ではなかったけれど、読んだキバは小さく吹
き出した。

「…なんだこれ。普通に話すのと変わんねーじゃん。」
「お前、一言だけだと怒るだろ。すげーめんどくせーけど悩んだんだぜ。」

それからはどちらからか笑い出して、しまいには何を話していたか忘れる始末だ
った。

「…俺、なんかいきなりキレてごめんな。」
「謝るなら俺よりナルトとチョウジだな。」
「…すげー迷惑かけた…」
「別に。」

キバはもう一度、シカマルの年賀状を見返してみる。
内容はともあれ、ナルトやチョウジよりもずっと沢山書き連ねてあった。
つまらない事だけれど、嬉しかった。

『今年もよろしく。お前、任務の時一人で突っ走るなよ。あと、赤丸が俺に噛み
つくの、あれいい加減止めさせろ。これからまだまだ一緒に任務やってくれねぇ
と困るんだよ。』





終わり。


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