Event Novels

□『洒涙雨』
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   サイルイウ

    洒涙雨






「ついてないね、兄さん」

「まったくだぜ……」





大佐に頼まれていた調査が終了したのは昨日の夕方。


それまではジメジメとした湿気もなくカラッと晴れていて、この調子なら明日も雲一つない快晴で朝一の列車に乗って指令部に向かえるな、とアルと話していた。


その天気の良さは夜になっても変わらなくて、宿の窓から空を見上げれば雲一つない夜空に夏の星座が輝いていた。


だから、明日の朝は鳥の囀りかなんかで目覚めて、清々しい一日が始まると思っていた。





それなのに………





「なんなんだよコレ!?」

「雨だね。と言うか、寧ろ豪雨だよね……」




オレの清々しい朝の予定は見事に裏切られ、目覚ましは鳥の囀りではなく窓を叩き付ける激しい雨音だった。



しかもこの雨、バケツをひっくり返したようなという慣用句がぴったりで、あまりにも雨足が強すぎて、1m先は真っ白で全く見えない。



これじゃ列車が動いてるかあやしい、と話していると宿の夫婦に、この時期にこれ程大量に降るのは珍しいから直に止むだろうと言われ、オレ達はその言葉を信じ、この雨は通り雨かなんかで、そのうち止むだろうと高を括っていた。



オレは時間を潰すように暢気に朝食を食べ止むのを待っていたが、雨はそう簡単に止むことはなかった。



そして、結局この雨は夕方になっても止むことはなかった。





「兄さん、報告書って明日までじゃないの?
朝からの大雨で列車がストップしてるから指令部に行けるのは明日以降になるって、連絡入れといた方がいいんじゃない?」

「そうだな、なんの連絡もなしに遅れて行ったら『こんな簡単な調査も期間内に出来ないのかね』な〜んて、大佐に厭味言われんのがオチだよな。はぁ、仕方ねぇな、連絡入れとっか……」



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